移転価格
外資系企業が直面する役務の提供やソフトウェア使用料などの無形資産取引から生ずる税務リスクを分析、アドバイス致します。
近年は、大企業のみならず、中小企業も移転価格による課税を受けるリスクが増加してきており、課税を受けてから行動を始める「泥縄式」の対応では日本と進出先国での二重課税は解消されず、結果として企業経営の源泉たるキャッシュフローを毀損することとなります。このため、海外進出を果たした企業(日本に進出した外国法人も含む)の移転価格対応は企業にとって喫緊の課題となっていると言えます。税理士法人JCTでは、移転価格更正リスクの測定によって企業の移転価格対応の決断をサポートしております。また、多くの海外拠点を抱える企業にとっては、すべての拠点に対して一時に移転価格対応をすることは非現実的であることから、移転価格更正リスクの測定により、優先的に整備すべき取引・拠点等を特定することで、効率的に移転価格リスクを低減させるプランをご提案致します。
海外拠点の独自文書化による弊害
中国をはじめ、多くの国では各年度の納税申告書の提出期限までに移転価格文書を準備しておくこと(同時文書化)が求められています。この場合、海外拠点の文書化を海外拠点任せにしていると、現地の会計事務所は往々にしてそれぞれの国の移転価格リスクを低減させるような文書を作成する傾向が強いように見受けらます。具体的には、現地法人の利益水準を含んだ、あるいはそれ以下となるような利益率のレンジを導出することで現地法人の営業利益は独立企業と同様あるいはそれ以上の水準にあるとする文書を作成してしまうのです。このような文書は、現地法人の所在地国においては税務リスクを低減させる方向で機能しますが、逆に日本法人の移転価格調査上問題を惹起するリスクをはらんでいます。なぜなら、現地法人の利益水準が現地独立企業のレンジより高い水準にあるとすれば、それは日本側に本来配分されるべき利益が現地国に配分されていることを意味するのであり、日本の税務当局がそのような状況を移転価格上問題視する可能性が高いためです。もちろん、海外の同時文書の記載によって直ちに日本側で移転価格の課税がなされるわけではありません(なされることがあってはなりません)が、このような文書が日本の税務当局に移転価格の蓋然性の根拠として使用されることが税務調査において不利に働くことは否めないでしょう。
また、その場限りの対応を海外拠点ごとに行っていると、それぞれの移転価格文書はその拠点ごとには説明可能なものであっても、企業グループ全体としてみた場合に整合性を取ることが出来なくなってきます。結果として、海外拠点ごとにちぐはぐな移転価格対応を日本の税務調査で指摘され、当局による課税案を受け入れざるを得ないところまで追いつめられることになってしまします。
このようなことを未然に防ぐためには、国外関連取引の価格設定に関する基本方針を社内運用ルールとして定めることが効果的です。このようなルール決めを移転価格ポリシーの構築といいます。今や、国際化を果たした企業グループにとって、親会社主導による移転価格ポリシー構築は、無用な課税リスクを回避するために非常に重要になってきています。
移転価格ポリシーの決定方法
国外関連取引の特定
国外関連取引と一言で言っても、棚卸取引、役務提供取引、ロイヤルティ取引、金融取引など様々な取引があります。また、棚卸取引の中には単純な原材料の売買もあれば、受託製造に近いような取引もあるかもしれません。まずは、会社の各部門のご担当者からのヒアリングに基づいて、会社が行う国外関連取引を特定していきます。
リスク分析・価格算定方法の検討
ヒアリングによってその存在が明らかとなった国外関連取引について、その取引の両当事者が果たす機能、負担するリスクなどを分析し、その国外関連取引に係る所得を関連当事者に配分する方法や独立起業間価格の算定方法について検討していきます。
運用ルールの策定
検討を経て決定された独立起業間価格の算定方法に従って、社内での運用ルールを策定していくこととなります。このようなプロセスは、経理担当者のみで完結することは出来ず、事業部門をはじめ全社的なコンセンサスを要するものであり、場合によってはこれまでの海外拠点の業績評価手法についても再検討を要することとなるかもしれません。
移転価格ポリシー文書の作成
これまでまとめあげた取引ポリシーと社内運用ルールを文書としてまとめることで、移転価格の税務調査があった際にも調査官にすぐに提出出来るように準備しておきます。しっかりした事実認定に裏打ちされた移転価格ポリシー文書が存在していれば、移転価格調査においても会社主導により調査を有利に進めることが出来るものと期待出来ます。
移転価格税制上、国外関連者との取引の内容を文書としてまとめること(ドキュメンテーション)は、法律上の要請となっており、調査官の求めに応じ速やかに提出する必要があります。移転価格の文書に記載すべき事項は法定されていますが、通常、これらの事項を独力ですべて記載することには大きな困難を伴います。税理士法人JCTは、会社の移転価格文書化をサポートするサービスをご提供しております。
移転価格の文書化プロセス
事前打ち合わせによる事案の概要把握及び移転価格分析対象企業の特定
移転価格の文書化は、国外関連取引の数及び複雑さにより、その工数が大きく変動してしまいますので、お見積りのための事前打ち合わせをさせて頂きます。
お見積り
概要から取引事案の複雑さを検討し、個別に文書作成費用をお見積り致します。
事実確認のためのヒアリング、契約書等の内容確認
成約後、貴社と国外関連者が行う国外関連取引の実態をヒアリングにより確認していきます。この場合のヒアリングは、経理ご担当者のみならず、研究開発部門、生産技術部門、製造部門、営業部門その他国外関連取引の実際のご担当者からも出来る限りお話を伺いながら、その国外関連取引のありのままの姿をあぶり出していくことが理想となります。その際に、担当者レベルでも気づかなかったような国外関連取引、特に無形資産の移転などのリスクが明るみに出ることもありますので、そうした点を漏らさず聞き取っていきます。その他、本社ー親子会社間の契約書等の内容も確認し、国外関連取引が契約書通りに行われているかなども確認していきます。
なお、工場の製造現場を見学させて頂く、あるいは海外子会社にも伺って現地のご担当者へのヒアリングを実施させて頂けますと、より精度の高い事実確認を行うことが出来ます。
事実分析レポートの作成、内容のすり合わせ
事実確認のためのヒアリングは、比較対象企業の選定に向けたステップです。従いまして、ここで事実誤認等がありますと、その後の作業がすべて無駄になり、非効率となってしまいます。私たちは、聞き取った内容を事実分析レポートとしてまとめることで、事実確認に誤りや不足がないかを貴社とすり合わせし、効率的なドキュメンテーションを行います。
機能・リスク分析、移転価格算定方法の決定
事実確認の結果に基づいて、国外関連取引の両当事者が果たす機能と負担するリスクについて検討します。多くの場合、より単純な機能を果たし、より少ないリスクを負担していると分析された会社が検証対象企業となります。
また、検証対象企業の選定と並行して、移転価格算定方法の決定も行います。移転価格税制上、移転価格算定方法は法定されていますので、法律上認められている手法のうち、事案に対して最も適合するものを選定する必要があります。
比較対象企業の選定
検証対象企業として選定された企業と類似する機能を果たし、リスクを負担している独立企業を比較対象企業として選定します。このプロセスは、日本をはじめ多くの課税当局が使用する公開企業財務データベースと同じものを使用してベンチマークテストを行うものです。最も一般的な方法では、まず定量的な指標により比較対象企業を抽出したのち、定性的分析によって絞り込みをかけることにより最終的な比較対象企業を決定し、それらの企業の営業利益率の幅を統計的手法で算定することにより行われます。
最終レポート案の作成及び内容についてのお打合せ
機能・事実分析に基づく比較対象企業の選定及び利益率のベンチマークの結果(案)をご提示します。比較対象企業及びその選定から漏れた企業について、それぞれ採用/不採用の理由をご説明します。また、貴社からもご意見を伺いながらレポートのブラッシュアップを図ります。
最終納品
必要があれば修正を施し、最終レポートの納品となります。ここまでのプロセスで、概ね3ヶ月から4ヶ月程度の期間を要します。
上記はフルレンジの移転価格文書化サービスのメニューとなりますが、貴社の移転価格対応の進展度に応じ、例えばベンチマーキングのサービスのみをご提供することも可能ですので、詳細はお気軽にお問い合わせ下さい。
事前確認申請(advance pricing arrangement : APA)とは、納税者が行う国外関連取引に関する価格設定が移転価格税制に適合していることについて課税当局と合意する制度をいい、国外関連者の一方が所在する国の課税当局のみとの間で確認を行うユニラテラルAPAと、国外関連取引の両当事者が所在する国の課税当局それぞれから確認をとるバイラテラルAPAがあります。
税理士法人JCTでは、納税者のバイラテラルAPA、ユニラテラルAPAの取得に向けた各種サポートをご提供しております。
移転価格に関するお問い合わせはこちらから
税理士法人JCT移転価格デスク 長田 健嗣
info@nagamine-mishima.com
TEL 03-3581-1976 FAX 03-5512-9893
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